職場に新卒看護師を迎える春。
経験者が退職し、勤務異動や医師の交代などもあって、ただでさえ血ヘドを吐くくらい忙しい時期です。が、新人看護師の初々しさこそが、そんな毎日に一筋の光をもたらしてくれるのです。
しかし! その新人看護師が「辞めたい」と言ってきた。
まだ就職して1ヶ月も経たないというのに、まだほとんどの仕事を一人でできない状態だというのにー。
このブログでは「退職希望の看護師は引き止めない」を推奨していますが、相手は新人看護師、しかも就職してまだ1ヶ月です。どうしますか? 看護師長!
新人看護師が超早期退職を申し出てきたら―、そのベストな対処法を考えてみましょう。
新卒看護師の「辞めたい」に驚かない
「期待と不安にあふれー」とよく言いますが、新人看護師の内心は99%不安でしょう。
「仕事が覚えられるかな」「失敗しないかな」「イジメに合わないかな」などがごっちゃになって、何がなんだかかわからない毎日を過ごすのが新人看護師です。(遠い昔ですが、みなさんも思い出してみましょう)
そして少しずつ何がなんだかが、例えば「業務の優先順位」や「他の看護師への報告、連携」が必要ということが分かるようになる頃に、強烈に「私、やっていけるのかしら……」となるのです。
むしろ、この時期に「私、イケる!やっていける気しかしない!」という人のほうが怖い。
「私、やっていけそうにない。辞めるなら早い方がいいよね」→「辞めたい」と言ってくるのです。
やってはいけない! 新人看護師の「辞めたい」への対処法
やってはいけない! 結論を急ぐ、急がせる
「辞めるなら早い方がいい」、これは一理あるようなないような、です。
早く結論を出すことで、スカッと次の職場にデビューできればいいのですが、「なぜ早期に辞めたくなってしまったのか」をちゃんと考えていなければ、転職した先でも「辞めるなら早い方がいい」を繰り返すことになりがちです。
まず、考える時間を持つこと。
新人看護師自身もそうですし、看護師長にもその時間が必要です。
辞めるか辞めないかの結論を急いではいけません。
「辞める、辞めない」は保留にして、現状を一緒に考えるようにしましょう。
やってはいけない! 「みんなそう思うものよ」でやり過ごす
「新人はみんなそう思うものよ。そういう時期よ」の一言で、問題を片付けてはいけません。
看護師長から見れば新人看護師という一団であっても、ひとりひとり個別の人間です。
自分が周りよりも劣っているのではないか、成長が遅いのではないか、と不安になっている新人にとって、「みんなも同じよ」の言葉が救いになることはありません。
「みんな頑張っているのに自分だけ頑張れない、情けない……」とさらに悩みを抱え込んでしまい、相談すらできなくなることも。
「辞めたい」と意思表示してきたことを師長がしっかりと受け止めなければ、新人看護師はココを乗り越えていくことができないのです。
やってはいけない! 辞める=挫折と思わせる

「たった1ヶ月で辞めるなんて、それじゃよそでもやっていけないわよ」とストレートに言う鬼師長はいないと思いますが、「辞めること=挫折、不適応」といった負のイメージを持たせてしまう呪いの展開には注意が必要です。
師長としては当然辞めてほしくないわけですが、だからといって「辞めない=正解」とは限りません。辞めるほうがいいのか、辞めないほうがいいのかは誰にも分からないのです。
辞めてほしくない、辞めないほうがいいという思いが強いあまり、知らず知らずのうちに「辞める=挫折」と思いこませてしまう。そのことを師長は肝に銘じておくべきです。
新人看護師の「辞めたい」へのベストなサポートとは
時間を稼ぐ
なぜ就職後1ヶ月のいま辞めたいのか、その”思い”を確認することから始めましょう。
前述しましたが、何となく周りが見え始めたこの時期なので、悩みの原因は具体的ではなく漠然とした不安のような状態かもしれません。なので、何を改善する、努力する、という具体的なアドバイスをする必要もないでしょう。
悩みや不安を抱え込まないように聞く姿勢を持ち、漠然とした不安の時期から抜け出すまで待つー、つまり、「時間稼ぎ」です。
「時間稼ぎ」というと言葉は悪いですが、新人看護師自身が「何が問題なのか」を明確にできるまで結論を急がせない。
看護師長のこの大人の姿勢が、新人看護師の支えになるのです。
職場側に問題がないをチェックする
時間稼ぎをしている間に、職場側の問題もチェックしておきましょう。
プリセプターなどの新人教育体制が効果的に機能しているか? 中堅やベテラン看護師に必要以上の負荷がかかっていないか? 新人看護師同士のつながりは? イジメやそれにつながるマウンティングは? などを冷静に確認しておきましょう。
3ヶ月後、半年後に「辞めたい」のその後を確認する
辞める、辞めないの結論を保留したまま時期が経てばそれでOKではありません。
3ヶ月後、半年後に「辞めたい」がどう変化しているかを確認しましょう。
職場や仕事に慣れて「辞めないで続ける」という結論を出すかもしれません。
まだ「保留」の状態でも「漠然とした不安」からは脱しているはずですので、具体的な悩みや課題について話し合う機会になるでしょう。
で、「辞める」という結論に至れば、それは看護師自身が出した結論として前向きに受け止めるべきでしょう。
まとめ
看護師の「辞めたい」悩みに対する答えは、「辞めるか辞めないか」という2つしかありません。看護師長は看護師自身が自分でその判断ができるようサポートするしかないのです。
しかし就職間もない新人看護師の場合は、判断できる材料を持っていないことに加え、早期に辞めることが「挫折感」につながりやすいという特徴があります。このことをふまえ、「結論を保留にする、急がせない」という選択肢を持つべきでしょう。
そしてたとえ「辞める」という結論に至っても、そこに「挫折感」や「敗北感」を持たないよう、看護師長として、看護職の先輩として前向きに後押ししましょう。