新型コロナの感染拡大をはじめとする社会の変化は、「看護師なのに」では解決することのできない一人の人間としての個々人にさまざまな影響や変化をもたらしています。
「看護は科学的根拠に基づいた行為」と言われながら、そうではないものに走ってしまう看護師たちも少なくありません。
反ワクチンや陰謀論、カルト宗教など、非科学的なものは看護の対極にあるように見えて、案外近いところにその入り口が存在しています。
なぜ看護師が反ワクチンや陰謀論、カルト宗教に走ってしまうのか。
もし職場でそのような看護師がでてきたらどうするか。
について考えてみましょう。
その前に、この記事で使う用語、俗語を以下のように定義しておきます。
・反ワクチン、反ワク
「ワクチンは人口削減を目的としたもの」「マイクロチップが埋められる」というような陰謀論的主張。アレルギーや副反応に対する疑念による慎重的主張はここには含みません。
・カルト宗教、カルト
信仰を利用して金銭や社会活動をコントロールする集団やその教義。特定の団体を指すものではありません
・スピリチュアル、スピ系
霊的、宗教的な思考、行動。文脈上、揶揄的に使うこともあります。
なぜ看護師は反ワクやカルトに走ってしまうのか
非科学的なものに傾倒してしまう要因は複雑です。看護という仕事の特性、職場環境、個人の性格など、さまざまな要因が混在していると考えるべきでしょう。
実際のケースを一部加工して紹介します。
ケース1 「もっと成長して尊敬される看護師になりたい!」
真面目で向上心が強く勤勉な7年目の看護師Aさん。
チームリーダーや新人指導など責任の大きな仕事を任されるようになりました。
「ヨシ!看護師としてもっと成長したい。みんなに尊敬される人になりたい!」という思いから心理学に興味を持ちセミナーや講習会に積極的に参加します。
が、そのなかにスピリチュアル色の強いものが。セミナーで知り合った人と親交を深めるうちにそっち方面に傾倒。そして仕事でも科学的根拠を重視しなくなり「私、目覚めたから」と言い始めます。
そしてある日、”自然派”洗剤を職場でも使うように強く主張し始めー。
ケース2 「そうよ!うまくいかないのは運気のせいよ」

仕事がうまくいかない、私生活も充実感がないという3年目の看護師Bさん。
頑張ってもミスばかりしてしまう自分を振り返りすぎたあげく、自分のミスの原因は「運気」にあるのではと考えるようになります。
すべては運気のせい。「私にとって”3”は不吉ナンバーなので3年目の今年は委員会の仕事はできません」と仕事を選んだり、”魔よけ”や”開運グッズ”を身につけるようになっていきます。
同僚からは陰で「スピちゃん」と呼ばれ、患者さんからも気味悪がられー。
ケース3 「これだ!宗教こそが看護の真髄なのよ」
多忙な急性期の病棟で亡くなっていく患者さんに対し、看護の無力さを感じていた5年目のCさん。終末期ケアの病棟に異動したことで扉が開かれます。
患者さんが信仰によって安らかな最期を迎えることに感銘し、「宗教こそが最終的な救い。看護の真髄だ」と強く思うようになります。
宗教的なケア以外に関心を失い、信仰をもたない同僚の意見を否定するようになりー。
非科学的なものを絶対視するようになると、ほかの考えを否定してしまう
ほかにも「友だちの誘いを断れず」や「疲れがとれるいい水があると聞いて」といったあらゆるところに非科学的なものの入口は開かれています。
上記の3人は少し極端なケースではありますが、いずれもはじめから間違っているわけではありません。
反ワクやスピ系、カルトといった非科学的なものへの傾倒は、他の考えへの疑念や否定からグラデーションを成すように進んでいきます。基礎教育や臨床で培ってきた「科学的根拠」でさえ根拠なく疑問視するようになります。
こうした言動は人間関係にほころびを生じます。深く関わらないでおこうと距離をおいたり、適当に話を合わせられるうちはいいのですが、それにも限界がー。
このような看護師にはどう対処すればいいか、また自身がそうならないためには、はこちらに続きます。