看護師のキャリアアップのひとつに「看護師長になる」というものがあります。いわゆる出世です。
大学病院や国立病院機構のように教育体制が整った病院では師長になるためのキャリアパスがあり、そこを経て師長になるのが一般的です。(*キャリアパス:師長になるための試験や研修、経験プログラムなど)
つまり、師長になることを目指して師長になる。もっとザックリ言えば「師長になりたくてなる」パターンです。
しかし中小規模の病院や個人病院では、
「師長になんてなりたくないのに仕方なく引き受けてしまった」
「断ることが出来ずに師長になってしまった」
という人も少なくありません。いや、むしろほとんどがそうかもしれません。
「このままでは師長のお鉢が回ってきてしまう」
「いや、もうすでに白羽の矢が刺さってるみたい」
というような、師長になりたくないのにさせられそうな状況で、絶対に師長にはなりたくないときはどう対処すればいいのでしょうか。
◆断れずに引き受けてしまった方はこちらの記事をどうぞ。
看護師長への昇進を拒否することはできるの?
昇進は個人の意思を無視して一方的に決定できるものではありません。まず「○○さん、あなたを次の師長にと考えているんだけどー」というような打診があるでしょう。
「師長にはなりたくない」という意思が決まっているのなら、この段階でしっかりと断る意思を伝えましょう。
「断る理由」は、師長以外の具体的なキャリアビジョンを示す
しかし、ただ「師長になりたくない」とだけゴネるだけでは、相手(現職の師長、看護部長)は当然納得しないでしょう。
敵(もちろん現職師長たちです)は師長としての適性の客観的な評価をあげ「あなたならできる」「あなたに引き受けてもらうのが一番だと思っている」と説いてきます。つまり、めちゃくちゃ褒めてきます。
ここで気をよくして「イヤイヤ、そんなことはないですぅ~」というようなあやふやな態度をとっては相手の思うツボです。「○○さんだったら、みんなも納得すると思うわ」とか、「院長先生も評価しているから」とか、あることないこと(いや、たぶんあることです)並べて説得にかかってきます。
そして最後は「誰だって最初は不安だけど、ちゃんとバックアップするから」と、時間が経つにつれどんどん断ることができないムードになっていくでしょう。こうなる前に手を打たないといけません!
そのために「師長になりたくない理由」をしっかりと準備しておきましょう。
たとえば、自分は「管理職ではなく専門分野のスペシャリストになりたい」という理由です。
ただこれも、これさえ言えば断ることができるというものではありません。
・またはすでに行動を起こしている
ことが「断る力」になるのです。あやふやな理由や付け焼刃的な理由ではつけ入るスキを与えてしまいます。職場の窮状を理由に「引き受けてもらわなければ困る」と泣き落としにあうかもしれませんが、最終的には本人の意思で決まることです。
引きけたくないのならその意思を強く持ち、しっかりと断りましょう。
師長への昇進を拒否するとどうなる?
とはいっても、師長への昇進を断るとどうなるのでしょうか。断ったことで仕事がしづらくなったり、人間関係がギクシャクしたりすることはないのでしょうか。
師長への昇進を断ると、別の誰かが師長になるか、誰かがなにかと兼務する形で師長のポジションは埋まります。組織とはそういうものです。自分が断ったことに責任を感じる必要はなく、これまで通りに仕事を続けるべきでしょう。
ただし、
・休みがもらえなくなる
・やらなくてもいい仕事ばかりを与えられる
などの不当な処遇や待遇を受けてしまう場合は、職場内または職場外への相談が必要です。
<職場外相談機関の一例>
日本司法支援センター「法テラス」
昇進を断り、転職を考えるときは
「師長を断ることで働きづらくなりそう」「これを機に、この職場を離れたい」そう思うときは転職も選択肢の一つです。師長への昇進を目されたほどのキャリアと実力なので、転職自体は難しくないはずです。
が、注意が必要なことがあります。
現在の職場と同規模、またはそれよりも小規模の病院や看護師の数が少ない介護施設の場合は、転職先でも再び「師長」「管理職」の話が回ってくるということです。
転職を考える場合も師長や管理職とは別のキャリアプランを考え、それが実現できる職場を選びましょう。
ここまでの経験を無駄にしないためにも、転職先の仕事内容や条件を充分に情報を吟味し前向きな転職にしましょう。